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前後截斷録 第48回

時代劇は東映!肆

中村錦之助、東千代之介、
そして大川橋蔵のこと


「時代劇は東映」の名を高くしたスターの代表は、中村錦之助であろう。NHKのラジオ番組でごく短い放送時間ではあったが、たそがれの一刻に少年少女を夢とロマンの世界に導いてくれた名作に、「笛吹童子」や「紅孔雀」というのがあった。それが映画化され、一躍銀幕のスターとして躍り出たのが錦之助であり東千代之介であった。今から思えばそのストーリィは荒唐無稽ではあったが、その「コートウムケイ」の中に、少年のわれらは現実社会への挑戦、不撓不屈の精神を養い培ったのである。
そのころの自分達が最も不思議に思ったのは、映画雑誌などにみる錦之助のふだんの素顔と、時代劇のヒーローに扮したときの美男子の男ぶりとの余りの相違、落差の大きさであった。メイキャップでこれほど変貌をとげることができる。田舎の村の鎮守の森の中で、悪ガキ共と一緒にチャンバラしながら、自らも勝手にスクリーンの中の錦之助に化(な)っていたが、そうしながら、イヤ、本モノはこんな感じじゃない、と反省しつつ、より錦之助の演技上のリアリティに近付こうと努力したものである。そして、われらもドーランを塗ってカツラをつければ錦之助に劣らぬ美剣士になれるのだと確信した。

時代劇は東映48
「美剣士ーワイズ出版、1998年12月1日刊『美剣士』円尾敏郎、高橋かおる編」より「美男城」カット
右は東映城のお姫様、憧れの大川恵子


 錦之助の代表作は何かと問われれば、躊躇なく「宮本武蔵」と答えるだろう。監督は内田吐夢。この「名匠」といっていいメガホン指揮のもと、61年位から年次を逐って5部作まで撮られた性根の入った作品である。原作は吉川英治の同名の小説で、恋人お通との果てしないスレ違いの愛を主軸に、吉岡憲法や佐々木小次郎ら当代の剣客を次々と斃し、宮本ムラのタケゾウから「ミヤモトムサシ」へと変貌成長してゆくというストーリィである。

 物語は極めて古風のラブロマンスであるが、今も昔も変わらぬ見ていて安心の物語で、また当時は結構これでよかったのであった。

(続)


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