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前後切断録 第45回


「時代劇は東映!」壱
新諸国物語
「笛吹童子」「紅孔雀」の時代


美剣士表裏
幼き頃の夢とロマンを想い出させてくれる、時代劇美剣士の特集本
(ワイズ出版、1998年12月1日刊『美剣士』円尾敏郎、高橋かおる編)



 今日は「時代劇は東映」——という、キャッチフレーズで戦後の時代劇をリードし、憧れのスターを次々と生み出した東映、その俳優さんたちのこと、散発継続的だが思い出すままに書いてみたい。鎧や刀への憧れから、歴史へ興味を持つようになったのも、考えてみれば少年時代にみて喝采を送った東映の時代劇に始まるといっても過言ではない。

 以下、古き良き時代の東映時代劇俳優さんたちのもろもろを、雑話的に記してみたい(文中登場の俳優さんの名は敬称を省略させていただく)。

 幼若の頃、いわば生活の伴侶となってゆく東映時代劇とのはじめの出会いは笛吹童子あたりから始まる。これは「新諸国物語」と題して毎夕刻15分程、NHKのラジオで連続放送された冒険ドラマで、北村寿夫原作、福田蘭童音楽であったが、このテーマ曲、ヒヤラーリ ヒヤラリコ〜で始まる歌が実に気に入った。できるだけこの時間は聴き逃さない様、外で遊んでいる時は近くのラジオのある家に寄せてもらい、玄関口で頼みこんででも聴くように頑張った。
 このドラマが評判がよく、やがて映画化されて大ヒットすることになるのだが、その主演が中村鈴之助であり、東千代之介、そして脇の主役が大友柳太郎(この頃は「朗」ではなく「郎」)であった。

 新諸国物語は「笛吹童子」のあと「紅孔雀」と続き、東映時代劇の記録的大ヒットとなった。この二作の成功で中村鈴之助や東千代之介は一躍スターダムにのし上がり、我ら少年の憧れの的となった。

 腕白坊主は勉強などそっちのけ、みんなに錦、千代が憑依して、森の中、林の奥を枝木の木刀をもって剣戟に奔走した。映画中の悪者や仮想の敵を拵えたり、夢想して、コガタナで指を切ったり、転んで膝小僧を擦りむいても、流れる血は全て正義のためのものである。意気は昂然たるものであった。しかしグループで笛吹童子のままごと遊びをするとき、必ず先輩年長の奴が主人公になって、自分達後輩はワキに廻される。それでも、その役に徹して励むのであった。

中村錦之助、東千代之介のことは、後日また別に触れる。



(R2,2,15)
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